こんにちは。
税理士の関口です。町田市つくし野で会計事務所を経営しています。
節税について、しっかり考えてみましょう。
税理士の最大の売り文句のが残念ながら「節税」です。「私を税理士として雇うと、税金が安くなりますよ」と宣伝している税理士が世の中にあふれています。
しかし、節税すると宣伝している送り手の税理士とその宣伝の受け手の経営者に認識の違いがあります。
経営者が、節税と聞くと支払う税金が減り、その分手元の現金預金が増えることをイメージするでしょう。
しかし、そんな方法は、ほとんどありません。
税理士から提案される節税は、経費を増やし、税金を減らす方法がほとんどです。
この方法だと、普通に納税するよりも、手元の現金預金が減ってしまう場合が多いので注意してください。
たとえば、100万円の利益が出ていたら、現行では約30%の税率なので、30万円税金を支払い70万円は手元に残ります。
それを、節税して100万円→50万円の利益にした場合は、次のようになります。
100万円ー50万円=50万円(利益)
50万円×30%=15万円(税金)
100万円ー50万円(節税分)-15万円(税金)=35万円(手元に残る現金)
節税しないよりも、節税したほうが、手元に残るお金が減ってしまいました。
こんなことにならないように、節税の本質をしっかりと理解した上で、節税を行ってください。
ちなみに、個人的な支払いを会社の経費にするのは、節税ではなく脱税なので注意してください。
節税の種類には、大きく分けて3種類あります。
①繰り延べる商品を活用する
②特例や法律間の違いなどを活用する
③法律のグレーゾーンを活用する
①繰り延べする商品を活用する
「生命保険を契約して、退職金の準備をしましょう」と保険会社から営業を受けた経営者はたくさんいるでしょう。
退職金準備のための生命保険は、支払った保険料の半分を経費にし、経営者が退職する時に、その保険を解約し退職金として払い出します。
この場合、短期的に見ると、保険料が経費になるので、税金は少なくなります。
しかし、長期的に見ると、保険料は経費になり、解約した時に戻ってくる保険金は収入になります。
収入と経費で差し引きゼロ。税金の総額は変わりません(税率の変動がありますので、多少税額が増減することがあります)。
生命保険や倒産防止共済などは、長期的に見ると今払うべき税金を将来に繰り延べているだけです。
退職金準備のための生命保険は、法人税の計算上、支払った金額の半分しか経費にならない商品がほとんどです。
例えば、100万円保険料を払った場合のお金の動きを考えてみましょう。
100万円の保険料を払った場合、経費になるのは50万円です。残りの50万円には税金がかかりますので、15万円の税金が発生します。支払う現金は、保険料の100万円と税金の15万円。合計115万円です。
一方、保険を契約しなかった場合は、100万円利益が出たら、税金30万円の支払いのみです。
もちろん、保険契約している場合は、保証もつきますから、一概にどちらが良いかを判断することはできませんが、節税目的で保険の契約を結ぶことはお勧めしません。
②特例や法律間の違いなどを活用する
政策上、特定の機械など設備投資を購入すると税金を少なくしてくれる特別な制度などを活用する。
法人税と所得税の税率の違いを利用して、役員報酬を上手に設定しトータルの税金を少なくする。など
そのほかにも、賃貸契約の家に住んでいる方であれば、賃貸契約を会社契約にして、社宅扱いにする。
旅費規程を作り、日当を払う。など
この方法は、税金をずっと少なくすることができるので、適用できるものがあれば積極的に活用しましょう。
③法律のグレーゾーンを活用する
都心のタワーマンションの上の階を購入する場合、購入価格は2億円だけど、税金の計算上の評価額は5千万円程度になる。
この差額を利用して、税金を減らす方法が流行りました。
こういった、法律の不備をついた節税が流行すると、国が目をつけて規制します。
グレーゾーンの活用は、最初にやり抜けた人は税金が少なくなりますが、後発組は規制に網にかかることがあります。
税金を少なくするつもりで、やってみたけど、結局規制されて思ったように税金を少なくできなかったということも多々あります。
節税のために行動しようとしても、結局、あまり良い結果が得られないことが多いようです。
私の顧問先のお医者さんが、こんなことをつぶやきました。
「節税のためと思って経費を使うと、結局無駄遣いが多くなり、お金はあまり残りませんね」
節税は『手元のお金を増やすため』ということを、常に頭において行いましょう。