2012年7月に単行本として出版され、2014年7月に文庫化された。
上巻466ページ。下巻435ページ。
アマゾンで上下巻2冊同時に購入。届いてみると結構分厚いので、読み始めるのにちょっと躊躇したものの、読み始めるととても面白く一気に読み終えた。
物語の主人公国岡鐡造のモデルとなったのが、2014年度の売上高4兆6,297億円、資本金1,086億円、従業員8,829名という大企業の基礎を築いた出光佐三氏である。
今では当たり前になった全国津々浦々に直営店を作り、問屋を通さずに消費者に適正価格で商品をお届けする「大地域小売業」を実現させた。
また、現在品質の良い石油を低価格で購入できているのは、出光氏の功績である。
1953年イランから石油を輸入する際、当初イラン政府がイギリスの石油を勝手に自分のものだと宣言したものと理解していたため、イランの石油は一切買わないと言っていたものの、状況を調査すると、現実は全く反対で、イランの石油をイギリスが不正に搾取している状況であるとわかり、危険を顧みず自分の会社のタンカーをイランに派遣して輸入してくるなど、信念の経営者であった。
目の前に立ちはだかる高い試練に挑みながら、「タイムカードはなし」「解雇しない」「労働組合はない」「定年なし」など人間尊重の経営を貫いた。
戦後、仕事が全くない状態の中で、約1,000人の従業員を1人も解雇せずに、会社を続けるなど出光氏が通ってきた道に比べたら、現在の自分の悩みなど悩みのうちに入らないととても前向きになれる本である。
2016年12月10日より映画「海賊と呼ばれた男」が全国公開されるので、今から楽しみである。(関口義宏)