2014年10月1日 第1刷発行。269ページ。
2015年にドイツの新聞社にリークされ、世界中で話題になったパナマ文書で明らかになったように、世界では、税率の低い国に所得を移動して、支払う税金を減らすグローバルな節税が、国際的な企業や富裕層で行われている。
単純に言うと、税率の高いA国にある会社の収入を、税率の低いB国にある会社に移動させて、B国で税金を払う。すると、税率の低い分税金が少なくなるのである。
具体的には、日本にあるアパートを日本の法人が所有して利益が出ると、その家賃収入に対して、日本の法人税約30%(中小企業の実効税率)がかかる。
それに対して、日本の法人が出資をして、ケイマン諸島に新しい法人を作り、そのケイマン諸島の会社が日本のアパートを所有すると、その日本のアパートの家賃収入に対する利益は、ケイマン諸島に対して税金を払うことになる。ケイマン諸島の税率は0%ですから、法人税を払わない。
いろいろな条件がありますから、簡単に税金がゼロになるという話ではないが、国際的な企業は、積極的かつ巧妙に利益の移動し、節税対策を行っている。
自民党が、法人税率を下げると、野党やマスコミから金持ち優遇と非難されるが、国際的な状況を見ると仕方がないことかもしれない。大企業に出て行かれたら、税収が全く入って来なくなるわけだから。
本書では、海外や国内の企業のグローバルな節税の仕組みを図を使って丁寧に説明している。
スターバックスやイケアなどの海外の企業や東京電力などの国内企業の節税方法が載っている。
あれだけ、税金を投入されている東京電力がグローバルな節税を行なっているというのには、多少の怒りを覚えたが…。
また、税率が低い国の紹介や税率の低い国々に法人を設立するための条件や手続きの方法などが丁寧に説明されている。
グローバルな節税の基本を理解するためには、とても良い本であるが、実際にグローバル節税を行おうと思った時には、もっと専門的な勉強が必要になるであろう。
【目次】
第1章 アップル、スターバックス、イケア… 海外企業のグローバル節税スキームの驚くべき実態
第2章 東京電力、東京エレクトロン… あの日本企業もグローバル節税を駆使している
第3章 世界トップクラスの高税率と苛酷な日本の税制
第4章 公平かつ合理的な戦略税制で国際競争力を高める国々
第5章 日本で払うか他の国で払うか、税金は自ら国を選んで納める時代
第6章 法人によるグローバル節税の活用例
第7章 個人によるグローバル節税の活用例
第8章 所得税ゼロのパラダイスもあり!タックス・ヘイブンの真実
第9章 タックス・ヘイブンごとの特徴とさまざまな利用方法