こんにちは。
税理士の関口です。町田市つくし野で会計事務所を経営しています。
製造業や建設業の方は、会社の業績を考える上で、原価をいくらにするかが問題になります。
そもそも、そんな問題が起こってくること自体、制度に問題がありますが、仕方ありません。
原価をいくらにするかの最大のポイントは、製造業であれば、期末に残った製品や仕掛品、建設業であれば、期末時点で建設途中の現場をどう評価するかです。
法律上、それら、期末にのこった製品などは、全部原価計算という方法で行います。
全部原価計算とは、製造や建設に直接関わった経費を全て原価として計算する方法です。
現場にかかわった人件費や燃料代、機械代などをすべてひっくるめて、期末に残った製品などに割り当てていきます。
たとえば、工場で働いている人に給料を払ったとしましょう。
その給料は、「経費」でしょうか?「資産」でしょうか?
ほとんどの人は、給料は経費と考えます。
しかし、税金の計算上は、工場で働いている人の給料の一部は資産にしなければいけません。
製品を作る場合、まず、材料を投入します。その材料を加工しました。
税金を計算する上では、その材料の価値は、人が手を加えたから、その分価値が上がったと考えます。
そう考えるため、工場で働いている人の給料の一部は、棚卸資産として、資産に計上しなければ法律違反になります。
この計算方法で、経営判断を行うと、利益は出ているのに、資金繰りが苦しくなるという状態になります。
製造業で考えてください。
この会社は、製品1個作るのに材料は10。外注費は30かかります。
つぎの図は、製品を10個作った場合と、同じものを15個作った場合の原価を表しています。
賃金は、15個作った場合、残業があり、10個作ったときよりも多くかかりました。
法律上の原価計算は、全部原価計算です。
経費のすべてをひっくるめて、ひとつずつ分配していきます。
まず、総費用を計算します。
10個の場合、材料費(10×10個)100と賃金500、外注費(30×10個)300の合計900。
この総費用を1個ずつ配分します。
900÷10個=90
10個作った場合には、製品1個当たりの原価は90となります。
15個の場合、材料費(10×15個)150と賃金510、外注費(30×15個)450の合計1,110。
総費用を1個ずつ配分します。
1,110÷15個=74
15個作った場合は、製品1個当たりの原価は74円です。
10個作ったら1個当たり90。15個作ると1個当たり74です。
1個当たり100で、9個販売するとどうなるでしょうか?
10個の場合:売上高(100×9個)900-原価(90×9個)810=粗利90
15個の場合:売上高(100×9個)900-原価(74×9個)666=粗利234
たくさん作って在庫したほうが144利益が多くなります。
売上高は、一緒なのに原価計算の関係で、利益が多く計上されます。
在庫の金額は、10個製造の場合90に対して、15個製造の場合444と354多くなります。
在庫は、キャッシュが形を変えたものですから、その分資金繰りを圧縮します。
上記のことは、正確に理解しておかないと経営判断を誤る可能性が非常に高くなります。
利益は、お客様に商品やサービスを販売した時に発生するものです。
製造業や建設業の場合、決算書を全部原価計算で行わなければなりませんので、決算書と現実は、かけ離れてしまうことがあることを理解しておきましょう。